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5.デスティネーション間の競争
日本の海外旅行市場は、これまで極めて順調な発展を遂げ、今後とも量的な拡大を続けるものと思われます。昨年の日本人出国者数は、推定1670万人(9.2%増)、今年は1750万人(4.8%増)、2000年には2000万人を超えることになると予測されています。
日本人海外旅行者の訪問先では、第一位はハワイ(年間約200万人)、次に香港、アメリカ本土、韓国が170万人と並んでいます。100万人が訪問している国としては、中国とシンガポールがあります。このような傾向から見てもお判りのように、旅行情報が多く、交通が便利でしかも旅行費用が手軽(安い)なデスティネーションほど人気があることが削ります。
1997年上期、日本で販売されているシルクロード・ツアーの旅行費用を比較をしますと次のとおりになります。

 

中国内・シルクロード(敦煌・西安)7日\300,000
中国とパキスタン11日\390,000
中央アジア(主にウズベキスタン)10日\290,000
ペルシャの旅(ベルセポリス・イスファファン)8日\300,000
トルコ周遊(アンカラ・カッパドキア・コンヤ)10日\310,000

 

シルクロード方面へのツアーは約30万円で販売されているのがわかります。旅行費用30万円で行けるデスティネーションとしては、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、オーストラリア等があります。シルクロードヘの旅行は、こうした先進デスティネーションとの競争関係にあるといえます。
6.「シルクロード観光局」の設立
シルクロードは、日本人にとって「夢とロマン」をかきたてる特別の響きを持った言葉です。各国別に観光局を設立するよりも、シルクロードの名前を冠して共同で設立するほうが、経費的メリットはもとより、より大きなPR効果を期待することができると思います。特にツアーを造成する旅行業者にとって、現地の情報が入手出来ないのは致命的です。因みに、現在日本には外国(地域、州、市を含む)の政府、自治体が100ヵ所以上もの「観光局」を設立し、それぞれの観光プロモーションに凌ぎを削っています。やはり、本格的な観光客誘致のためには、何らかの情報提供ならびにプロモーション機関が必要です。幸い、日本政府の「ODA」も最近は観光分野にも門戸を広げていますので、「シルクロード観光局」の設立に関して、何らかの支援が得られるのではないかと思われます。
7.「お客様」から見たシルクロード
シルクロードを旅してみたいと夢みている日本人は多く、潜在顧客層は大きいものがあります。しかし、いざツアーに参加するとなると、30万円の予算と10日間の休暇を要する為、二の足を踏む人もまた多いのが実情です。
実際にシルクロードを旅する人は、リピーターが中心となります。ヨーロッパやアメリカといった、所謂一般的な「観光地」はすでに見てしまった、従来と違った新たなデスティネーションを求める人達が主な顧客層となります。
しかし現時点におきましては、シルクロード沿いの「都市」の一部は、ホテル、レストラン等の設備が劣悪である、またサービス面においても不評のものがあります。私はこの方面への旅行を計画するに際しまして、お申し込みいただいたお客様に対し、出発前に「旅行説明会」を開催し、旅行条件のマイナス面について詳しくご案内することにしております。このような努力は、シルクロード・ファンを失わないためにも大切であります。
8.「シルクロードを全線走破するユーラシア大陸横断50日間バスの旅」
第一回目は、1995年9月、中国の西安からトルコのイスタンブールまで、シルクロード全線

 

 

 

 

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